日本で高速道路が初めて開通したのが1963年で当時、設定された制限速度は100km/hでした。今現在でも日本国内の高速道路の制限速度は、多くの区間で80km/hもしくは100km/hです。クルマの性能が向上したり、道路の建設技術が向上したにも関わらず制限速度が引き上げられませんでした。制限速度が100km/hの高速道路は世界的に見て低水準です。
ついに2019年3月1日より新東名の一部区間にて試験的に制限速度が120km/hに引き上げられ、2020年12月22日より制限速度が正式に120km/hへ引き上げられました。
諸外国では制限速度が130km/hや140km/hの国もあり、日本もようやく諸外国の水準に近づきました。
しかし、120km/hを出すのは怖い、速いクルマとの速度差が怖いと感じる方もいるかと思います。
なので今回は、制限速度120km/h区間が怖いと感じる理由と安全に走る方法を紹介します。
制限速度120km/hの場所
2022年12月現在、制限速度が120km/hの場所は以下の区間です。
新東名 浜松いなさJCT付近〜御殿場JCT付近
東北自動車道 岩槻IC付近〜佐野藤岡IC付近、花巻南IC付近〜盛岡南IC付近
東関東道や常磐道の一部区間が制限速度120km/hへ引き上げの候補に選ばれています。
また現在、3車線化が進められている新名神も制限速度が120km/hになるのではといわれてます。新東名と新名神を結ぶ中間地点にある伊勢湾岸自動車道は片側3車線ありますが、事故や出口渋滞が多く、横風が強いので恐らく制限速度は100km/h据え置きになるかと思われます。
120km/hの世界とは
クルマは速度が上がるほど、車体が不安定となります。高速域では、加速が鈍くなり、ステアリングがシビアになります。SUVやミニバンといった背の高いクルマでは風の影響を感じやすくなります。視界が狭くなり、周囲が見えにくくなります。
高速域で安定して走れるクルマは排気量が大きく、馬力やトルクの高いクルマ、全幅とホイールベースの長いクルマが高速走行に向いています。特にドイツ車は制限速度が無い区間が存在するアウトバーンを有する国のクルマということもあり、高速走行が得意なクルマが多いです。
120km/hでは1秒間に約33.3m進みます。ルームミラーを少し見ただけでもかなりの距離が進みます。
夜間のヘッドライトのロービームは約40m先しか照らすことができません。なので、ロービームで照らせる範囲で路上に落下物等を発見した場合でも1秒少々で到達するため、回避することが非常に困難です。(120km/hで急ハンドルを切るとコントロールを失い横転事故に繋がります。)
速度が高いと急ブレーキによる停車までに距離を要します。
ドライバーが危険を確認しブレーキペダルを踏むまでの走行距離を空走距離といい、約1秒間といわれています。ブレーキが効き始めてクルマが停止するまでの走行距離を制動距離といいます。
100km/hでは空走距離が28m、制動距離が56mのクルマの場合、停車させるのに84mの距離が必要になります。
空走距離は速度に比例し、制動距離は2乗に比例します。
なので、同じクルマで120km/hの場合、空走距離が33m、制動距離が81mになり、停車させるのに必要な距離は114mとなります。
車種やタイヤ・ブレーキ性能、路面状況によって異なりますが、20km/hの違いで30mも停止に必要な距離が変わってきます。ドライバーの体調によっては更に空走距離が伸びる場合もあります。
よって、120km/hで安全に走行する場合は前方車との車間距離を120m以上空けて走行する必要があります。(1km/hにつき1mの車間距離を空けることが推奨されています。)
事故や渋滞の発見が遅れるとクルマが止まることが出来ず、事故の原因になります。(事故の衝撃も速度の2乗に比例しますので、大事故に発展します。)
80km/hと120km/hの速度差
多くの方が怖いと感じる速度差ですが、大型貨物車や牽引車の制限速度は据え置きの80km/hです。なので左車線の大型貨物車の後ろを走行する場合、時速80km/hとなり、右車線を120km/hで走行するクルマとの速度差は40km/hとなります。中には120km/h以上で走行するクルマも存在し、速度差は更に広がります。
40km/hの速度差では1秒間に約11mの距離が縮みます。11mはトヨタ カローラ2台半の長さです。
速度差が大きいと車線変更時に気を使いますね。「ルームミラーで確認した時は、豆粒程度の大きさのクルマが気が付けばすぐ真後ろを走っていた。」なんてことも。
120km/h区間ではいつも以上に余裕を持って車線変更しましょう。後続車にブレーキを踏ませるような車線変更を行うと煽り運転といった交通トラブルに発展する可能性もあります。
車線変更が怖い方は3車線ある場合、余程の理由がない限り右車線を走行するのを控えましょう。車線変更する際は、なるべく追い越し車線を走るクルマと同じぐらいの速度まで加速させると速度差が軽減し車線変更のタイミングを簡単にできます。
まとめ
制限速度120km/h区間では無理に120km/h出す必要はありません。あくまで、120km/h出すことが出来るという意味です。気象条件や体調次第では危険な場合もあります。自身の能力と相談して余裕を感じる範囲の速度で走行しましょう。
原則、左車線を走行し車線変更の際は、いつも以上に余裕を持って行うと制限速度120km/h区間を安全に走行することができます。